十三支演義~偃月三国伝2〜 張遼√
※ネタバレ有り
ミステリアスな雰囲気は健在でありながら、これまでの√も主になってくださいとお願いされ続けているし、一貫してヒロインを傷付けようとしないので好感度はいつだって高い。私なら普通に受け入れちゃうし曹操軍から不安要因をひとつでも取り除いておけばいいのに…と思いましたが、戦場の駆け引きなんかは未知なので適当なことは言えないのでひとまず。
2のストーリーは呂布が劉備に倒された後のお話ですが、プレイ後のユーザー的にはなぜ張遼がいるんだろう…というのがポイントでした。当人もなぜ呂布亡き今存在しているのか疑問に思っていて、そこを追求していくのも課題でした。
「私が自由の身となり、何をしたらいいのかわからず、途方に暮れていた時貴女の顔が浮かんだのです」
「ないはずの心に暖かな火が灯るようなそんな感じがしました。だから私は貴女の傍にいたいのです」
1の時点命を分け合っているので個人的に距離感近く感じているキャラなんですが、ヒロインと関係性がないところからスタートしているわけではないので、張遼のなかにヒロインが暖かいものとしてインプットされているのは好きでした。張遼は行動原理がシンプルで分かりやすい。
張遼は少しずつ確実に心の動きが大きくなっていく過程が丁寧で良い。周瑜や趙雲と関わる機会が増えたことで、人に好意を持つという心だけでなく、嫉妬や独占欲なんかも徐々に意識しだして、「何故か胸のあたりが少し痛い気がします」と、その心の痛みに苦しむことになるのですが、それもまた当√の醍醐味でもあります。
張遼√では、ヒロインに何者かが憑りついて殺戮的な人格が国中を脅かすようになるという劉備の二の舞のような事件が起きます。張遼はヒロインが行った非道な行動を真実のまま伝えるのですが、優しい嘘も必要なのだと猫族に説かれます。
ヒロインは猫族に迷惑を掛けたくない一心で張遼との二人旅に興じることになるのですが、行く先々でその人格はヒロインの心を蝕んでいくわけで、張遼はそんな行動をしつづける人格に訴えかけながらも、血まみれになった髪を洗って優しい嘘をついて、ヒロインの心を守ろうとします。成長……。1の比べても自分で成長している……。
ヒロインはなにかあった時張遼に自分を殺すように訴えるのですが、拒絶を示します。
「そんなたったひとつのものに縋って貴女の下にやって来ましたが、貴女に会い共にいるようになって思いました」
「貴女は温かいです。何もない私の心を埋めぬくもりを与えてくれます」
「だからどうか私をずっと貴女の傍に置いて下さい。私にはもう貴女しかいないのです」
「どんな貴女でも私にとっては貴女です。全身全霊を以って守るべき存在。私の存在は貴女のためなのです」
このタイミングでこの言葉を掛けられるのは張遼ならでは。
呂布を主に持ち、人間でないからこその結果に結びつくことができたのであって、彼√の特権であるように思います。
張遼の熱情的な告白には思わず頬が緩みました。
普段から何を考えているのか分からない張遼だからドキドキしてしまう。「お願いです。どうか、私のことを好きになって下さい……」好きじゃん?(知らん)懇願系は告げる側が圧倒的に溺愛って比重が分かるから、最高好きな告白形式でした。
それなのに、ヒロインも張遼への想いが大きいが故に張遼に生きていてほしいから命を差し出すこととなり、張遼はこれ以上ないぐらい落胆してしまいます。
ヒロインの命を貰ったことで、ぬくもりを手に入れて鼓動すらも手に入れます。
生きてほしいというヒロインの自分勝手にも思える言動に「貴女が私にそう望むのであれば私は喜んでそれを引き受けます。苦しみも悲しみも絶望も何もかもすべて」とすべてを許容できるのは張遼ならでは。
「空っぽだったこの胸に、貴女は色々なものを下さいました。愛おしさや優しさ、嫉妬や独占欲といったものまで……」
「この身に宿った命のむくもりもこの心に集められた思いも感情もすべて貴女が下さったもの……」
「私は貴女で出来ているのです」
まじでハピエンへの展開が想像出来ていない過程でびっくりしました。邪気の浄化にかなりの時間を有することを悟って、ヒロインが大樹に飲み込まれてなおかつ貴女をまっているというんだから一番うるっときたシーンでした。
エピローグで何度生まれ変わっても~な台詞があってやっと報われた気持ちになりました。運命の相手扱いではないけど、お互いへの想いが強かったからこそ千年の時を超えて結ばれたんだよね。張遼に本当の意味で命を与えられてよかった。