神凪ノ杜 市丸√

 

 

※ ネタバレ有り

 

 

 

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市丸(CV .興津和幸

妖艶で人と距離を取っている大人な市丸さん。

CV.興津さんでこのタイプはだいたいズルい。学生陣との恋愛とは違って、明らかに対人関係が成立してなさそうというか掴みどころがない。学生ゆえの脆さなんかもない。

前編という扱いでいいんでしょうか、真相に近付くシナリオでもありました。

 

 

妖屋としての仕事スキルは高く場慣れしており、この仕事向きで感情移入しない人でした。

一方で、ヒロインは妖であっても感情移入し、深入りしてしまう女の子。活発な女の子では決してないんですが、共感性が高くて優しい子です。市丸さんは深入りするな、と仕事に対して叱りつつも少しずつヒロインのやり方に寄り添ってくれます。

 

 

 

序盤は、ヒロインが囲碁ができることが鍵で、ぐっと距離が近づくポイントでもありました。

ここでヒロインがしっかり強くて笑ってしまった(笑)線香花火対決だったり、市丸さんみたいなタイプが些細なところで負けず嫌いなところをいいなあ。大人だけど、こういうところあるんだ…ってヒロインが気になっちゃう点もすごく自然で好きでした。

 

毎日の囲碁対決の末に、「勝った方の言うことをひとつ聞く」といった賭けをしてヒロインが負け。

市丸さんは"今は特にない"と保留なんですが、勝った時はどうするのか聞かれたとき「文化祭に来てください」とお願いするつもりだったことを伝えます。ここでの、小さな我が儘が市丸さん的には大きかったんだろうなと思うと泣きそうになる。

 

 

 

文化祭について特に触れることはなく、東雲さんたちの誘いも流したうえで、こそっと文化祭に来てくれるんですよ~~~!?ズルい大人!!!!シンプルに好き。

しかも、市丸さんが来ている!とヒロインが思えたタイミングが天才で、ガスコンロがつかなくて困っていたところに市丸さんの能力を使って火をつけてくれるんですよ。些細な伏線が本当にきれい。

結局賭けに勝っても負けてもお願いをかなえてくれる市丸さん。こんなん好きになるって…。しかも、コーヒーが苦手という小ネタの上にヒロインの前ではちょっと見栄を張っちゃうところまで100点満点でしたね。

 

 

 

ぬいぐるみの件は、ヒロインも市丸さんでもどうしようも出来ない案件で心苦しかったです。結局欲しかったのはぬいぐるみではなく、ぬいぐるみをくれた頃の息子だったんですよね…。

「深入りしても、傷付くだけだ」深入りするなと言い続けた市丸さんの続きを初めてきいた、と言う描写が本当に好きだったし、「お前があんな男に傷付けられるのを見るのは、気分が悪い」という言葉が、恋心を自覚する瞬間というのも良かった。

 

 

 

ここから一気に核心に迫っていきました。

黒雨はもともと"市丸"という名で南条家の巫女・文乃の式妖であったこと。そして、市丸さんは、はもともとの市丸(黒雨)から文乃の記憶がない部分の魂を切り離したものでした。人間組だと思っていた市丸さんも妖の類であるということです。市丸さんと黒雨はつまりは一心同体であり、黒雨を殺すことは市丸さんを殺すことにもなる、と。

 

それでも、恩義のある辰蔵のためにもヒロインに害を及ぼそうとする黒雨を止めるために市丸さんは殺しにいってしこうとします。

妖と人の恋愛の一番の見所って生きる長さの違いだと、私は思うんですよね。想いが溢れて、惨めでも引き止めたい一心で告げた答えが「俺はお前が死んだ後、何百年と何千年も生きるなんてごめんだ」最強だと思うんですよね。つまり、お前を想ってこれから一生ひとりなのは寂しい。という解釈で落ち着きました。ここで、囲碁勝負の賭けであった、お願いを使うんですよ。本当に勘弁してくれ。シンプルにシナリオが綺麗。

 

 

 

祖父である辰蔵は人柱の件や、市丸は黒雨の半分であることを知っていた。と言うことが明らかになりました。何を思い生きているのか掴めないお爺さん。黒幕なんだろうか。

 

 

 

色々あって、黒雨を始末することに成功します。

それと同時に市丸さんも消えかかるんですが、ヒロインが自分の魂の半分を与えたことで2人とも短いながら余生は想いあって生きていく…となんともしんみりとしたハピエンでした。貴方がいるひとときを一番に求めたエンド。私はかなり好きでした。

 

 

SSに入ってからめちゃくちゃ甘い声だすの本当ズルい……。おまけ読んでさらに好きになれました。CV.興津和幸のなかでも特に推したいキャラでした。